防犯カメラ用HDDとは?
パソコン用HDDとの違いと選び方を分かりやすく解説
防犯カメラの録画装置であるDVRやNVRには、録画映像を保存するためのHDD(ハードディスクドライブ)が搭載されています。
見た目だけなら、パソコンに使われているHDDとよく似ています。
そのため、
「パソコン用の安いHDDでもいいのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、防犯カメラのレコーダーでは、24時間365日、複数台のカメラ映像を書き込み続けるという、パソコンとはかなり異なる使い方をします。
そのため、防犯カメラには一般的に監視システム用として設計されたHDDが使用されます。
実際に主要HDDメーカーも、監視システム用HDDを24時間365日の連続録画や複数の映像ストリームに対応する製品として設計しています。
防犯カメラ用HDDとは?
防犯カメラ用HDDとは、DVRやNVRなどの監視システムで録画映像を保存することを想定して設計されたHDDです。
例えば、
防犯カメラ
↓
DVR・NVR
↓
内蔵HDDへ録画
という構成で使用します。
防犯カメラが撮影した映像は、レコーダーへ継続的に送られてきます。
カメラが8台あれば、基本的には8台分の映像を同時に処理しながらHDDへ保存することになります。
そのため、防犯カメラ用HDDには長時間の連続書き込みに適した性能と耐久性が求められます。
なぜ防犯カメラには専用HDDを使う?
大きな理由は、使い方がパソコンとは違うからです。
一般的なパソコンでは、
-
ファイルを開く
-
インターネットを見る
-
データを保存する
といった処理を行い、HDDへの読み書きも断続的です。
一方、防犯カメラでは、
朝も
昼も
夜も
深夜も
映像を書き込み続けます。
監視用HDDは、こうした24時間365日の連続録画を想定して設計されています。
例えばWestern Digitalの監視用WD Purpleは常時稼働の監視用途向けに設計され、現行の主流モデルでは最大180TB/年のワークロード率を掲げています。
パソコン用HDDとの違い

監視用HDDメーカーも、一般的なデスクトップ用HDDは断続的な使用を想定しているのに対し、監視用HDDは常時稼働や複数の映像ストリームを処理する用途に最適化されていると説明しています。
防犯カメラは「書 き込み」が非常に多い
防犯カメラ用HDDの特徴を理解するには、書き込み量を考えると分かりやすくなります。
例えば8台のカメラを24時間連続録画すると、
カメラ1 → 書き込み
カメラ2 → 書き込み
カメラ3 → 書き込み
……
カメラ8 → 書き込み
という処理が絶えず続きます。
さらに録画映像を再生している間も、新しい映像の録画は続きます。
つまり、
録画しながら、過去映像を再生するという処理も必要です。
このような監視システム特有の使い方に合わせて、防犯カメラ用HDDは設計されています。
防犯カメラ用HDDにはどんな製品がある?
代表的な監視システム用HDDには、
などがあります。
いずれも監視システムでの連続録画を想定したシリーズです。
ただし、監視用HDDならどれでも手持ちのDVR・NVRへ取り付けられるとは限りません。
レコーダー側の対応容量や互換性を確認する必要があります。
防犯カメラ用HDDは何TB必要?
これは非常によくある質問ですが、
「カメラ8台なら○TB」
と台数だけでは決められません。
録画容量は主に、
-
カメラ台数
-
解像度
-
フレームレート
-
ビットレート
-
コーデック(H.264/H.265など)
-
常時録画かイベント録画か
-
必要な保存日数
によって変わります。
基本的な考え方は、
1台あたりのデータ量 × カメラ台数 × 録画時間
です。
画素数が高いほどHDD容量も増える?
一般的には、同じ圧縮条件などで比較すれば、解像度が高くなるほど必要なビットレートも大きくなりやすいため、録画容量も増える傾向があります。
例えば、
200万画素
から
800万画素(4Kクラス)
へ変更すれば、同じ条件で単純に同じ録画日数になるとは限りません。
ただし実際の録画容量は、画素数だけでなくビットレート設定に大きく左右されます。
「何万画素だから何TB」と画素数だけで判断しないことが重要です。
フレームレートでも容量が変わる
フレームレートは、1秒間に何枚の画像を記録するかを表します。
例えば、
-
5fps
-
15fps
-
30fps
では、映像の滑らかさが異なります。
一般に、他の条件が同じなら高いフレームレートほどデータ量も増えやすくなります。
防犯用途では、必ずしも全カメラを30fpsにする必要はありません。
撮影目的に合わせて設定することで、HDD容量を有効に利用できます。
H.265なら録画容量を抑えられる
映像の保存容量には、コーデックも関係します。
代表的なのが、
H.264
と
H.265
です。
一般にH.265はH.264より高い圧縮効率を狙った規格で、同程度の画質を維持しながらデータ量を抑えられる場合があります。
そのため、
同じHDD容量でも、録画設定によって保存できる日数が変わる
ということになります。
ビットレートが録画容量を大きく左右する
実際に録画容量を考えるとき、非常に重要なのがビットレートです。
例えば1台のカメラを、
4Mbps
で24時間録画するとします。
概算では、
4Mbps ÷ 8
= 0.5MB/秒
0.5MB × 60 × 60 × 24
= 約43GB/日
です。
カメラ8台なら、
約43GB × 8台
= 約346GB/日
となります。
30日なら単純計算で、
約10.4TB
です。
実際にはHDDの実効容量、可変ビットレート、音声、メタデータ、録画方式などによって変わりますが、録画容量はビットレートから概算すると非常に分かりやすくなります。
常時録画とモーション録画でも違う
録画方式もHDD容量へ大きく影響します。
常時録画
24時間連続して録画します。
確実に映像を残しやすい一方、容量を多く使用します。
モーション・イベント録画
動きやAIイベントなどが発生したときだけ録画します。
容量を節約できますが、検知設定によっては必要な映像を残せない可能性もあります。
防犯目的では、単にHDD容量を節約することだけを優先せず、必要な映像が確実に残る設定を考えることが重要です。
HDDがいっぱいになったら録画は止まる?
一般的な防犯カメラ用DVR・NVRでは、HDDがいっぱいになると、古い録画から順番に上書きする設定が使われます。
例えば30日分保存できるシステムなら、31日目の録画を保存するときに、1日目の古い映像から上書き
していくイメージです。
そのため、
HDD容量=永久に保存できる容量
ではなく、
何日間さかのぼって映像を確認できるか
と考える方が実用的です。
事件があった映像は早めにバックアップする
上書き録画で特に注意したいのが、事件や事故が発生した場合です。
必要な映像をそのままレコーダー内に置いておくと、時間が経過して上書きされる可能性があります。
重要な映像が見つかったら、
-
USBメモリ
-
外付けストレージ
-
PC
などへ、レコーダーの機能を使って早めにバックアップすることが重要です。
「後で確認しよう」と思っているうちに上書きされてしまう可能性があります。
HDDは消耗品
防犯カメラのHDDは、永久に使用できる部品ではありません。
内部には機械的に動作する部品があり、24時間365日録画を続けています。
そのため、長期間使用すれば故障する可能性があります。
注意したい症状には、
-
録画されていない
-
過去映像を再生できない
-
HDDエラーが表示される
-
異音がする
-
レコーダーがHDDを認識しない
などがあります。
防犯カメラ本体が正常でも、HDDが故障していれば「映っているのに録画されていない」という事態が起こります。
「映像が映っている=録画されている」ではない
これは非常に重要です。
モニターにライブ映像が表示されていると、「防犯カメラは正常」と思ってしまいます。
しかし、
カメラ → 正常
モニター表示 → 正常
でも、
HDD → 故障
していれば録画されていない場合があります。
そのため防犯カメラでは、定期的に過去映像を実際に再生して確認することをおすすめします。
HDDの交換は自分でできる?
技術的には交換できる製品もありますが、注意が必要です。
DVR・NVRによって、
-
対応HDD容量
-
対応機種
-
最大搭載台数
-
初期化方法
などが決まっています。
例えば、
最大8TB対応のレコーダー
へ、
16TBのHDD
を取り付けても正常に認識するとは限りません。
また、交換後にはレコーダー側でHDDを初期化する必要がある場合があります。
メーカーや施工会社が指定するHDDを使用する方が安全です。
HDDを大容量にすれば録画期間は延ばせる?
レコーダーがその容量に対応していれば、基本的にはHDD容量を増やすことで録画可能期間を延ばせます。
例えば、
4TB → 8TB
へ増やせば、同じ録画条件なら保存できる期間は概ね長くなります。
ただし、
レコーダーの最大対応容量
を超えるHDDは使用できない場合があります。
防犯カメラの保存期間を延ばしたい場合は、HDDだけを購入する前にレコーダー仕様を確認しましょう。
HDDを2台搭載するレコーダーもある
法人向けや多チャンネルのレコーダーには、複数のHDDを搭載できる製品があります。
例えば、
8TB × 2台
などです。
これによって大容量の録画領域を確保できます。
さらに高機能なシステムでは、RAIDなどを利用してHDD故障への耐性を高める構成もあります。
ただし、HDDを2台搭載している=自動的にバックアップされているとは限りません。
どのような録画・冗長化構成になっているかを確認する必要があります。
AIカメラではHDDへの負荷も考える
AIカメラでは通常映像だけでなく、
-
人物
-
車両
-
顔
などの検出情報を扱うシステムがあります。
AI対応の大規模監視システム向けには、映像録画に加えてAI解析ワークロードを想定した監視用HDDも存在します。例えばWestern DigitalのPurple Proや東芝S300 AIは、AI対応監視環境を対象としています。
カメラ台数やAI機能が増えるほど、レコーダーとストレージを含めたシステム設計が重要になります。
防犯カメラ用HDDを選ぶポイント
選定では、単純に「安いHDD」を探すのではなく、
① 監視システム用HDDであるか
② DVR・NVRが対応しているか
③ 必要な容量があるか
④ カメラ台数に対応できるか
⑤ 24時間365日運用を想定しているか
⑥ 必要な録画日数を確保できるか
⑦ AIなどシステムの負荷に対応できるか
を確認します。
最も重要なのは、HDD単体ではなく、カメラ・レコーダー・録画条件を一つのシステムとして考えることです。
よくある質問
パソコン用HDDを防犯カメラに使えますか?
物理的に接続できる場合があっても、監視用途にはおすすめしません。一般的なデスクトップ用HDDは断続的な利用を想定しており、監視用HDDは24時間365日の連続書き込みや複数映像ストリーム向けに設計されています。
HDD容量が大きいほど画質は良くなりますか?
いいえ。HDD容量は主に保存できる録画量・期間に関係します。画質そのものはカメラ、解像度、ビットレートなどによって決まります。
HDDが故障するとライブ映像も映らなくなりますか?
必ずしもそうではありません。HDDが故障していてもライブ映像は表示される場合があります。そのため録画再生の定期確認が重要です。
HDDは何年で交換すればよいですか?
一律に「○年」と決めることはできません。使用環境、温度、振動、HDD、録画負荷などによって異なります。レコーダーのHDD状態やエラーを定期的に確認することが重要です。
大容量HDDへ交換すれば録画期間を延ばせますか?
レコーダーがそのHDDと容量に対応していれば可能です。購入前にDVR・NVRの最大対応容量を確認します。
まとめ
防犯カメラ用HDDは、一般的なパソコン用HDDとは用途が異なります。
防犯カメラでは、
-
24時間365日
-
複数台のカメラ映像
-
連続した書き込み
という特殊な環境でHDDを使用します。
そのためDVR・NVRでは、監視システム向けに設計されたHDDを使用することが基本です。
また、必要なHDD容量は単純にカメラ台数だけでは決まりません。
カメラ台数 × ビットレート × 録画時間 × 保存日数
を基本として、
-
解像度
-
フレームレート
-
H.264/H.265
-
常時録画・イベント録画
などを考慮します。
そして何より重要なのが、
「カメラ映像がモニターに映っているから、録画も正常」とは限らない
ということです。
防犯カメラは事件が起きたときに録画されていなければ意味がありません。
HDDも防犯カメラシステムを構成する重要な機器の一つとして、定期的に状態を確認することが大切です。
防犯設備士からのワンポイントアドバイス
防犯カメラのメンテナンスで、ぜひ確認していただきたいのが「過去映像を実際に再生できるか」です。
モニターに8台のカメラがすべて映っていると、システム全体が正常に動いているように見えます。
しかし、ライブ映像の表示とHDDへの録画は別です。
今日の日付から昨日へ戻って、実際に録画映像を再生してみる。
これだけでも、録画トラブルの早期発見につながります。
特に長期間使用しているDVR・NVRでは、カメラ本体だけでなくHDDの状態確認も定期点検項目に入れることをおすすめします。