デジタルズームと光学ズームの違い
防犯カメラでは何が違う?
防犯カメラの映像を見ていると、
「もう少し人物を大きく見たい」
「録画映像を拡大してナンバーを確認したい」
ということがあります。
そこで使用されるのがズーム機能です。
防犯カメラのズームには、大きく分けて、
デジタルズーム
と
光学ズーム
があります。
どちらも映像を大きく見る機能ですが、仕組みはまったく異なります。
特に重要なのが、
デジタルズームは、録画されていない細かな情報を新しく作り出す機能ではない
ということです。
この記事では、デジタルズームと光学ズームの違いや、解像度・レンズとの関係、防犯カメラではどのように使い分ければよいのかを分かりやすく解説します。
デジタルズームとは?
デジタルズームとは、撮影された映像の一部分をデジタル処理によって拡大表示する機能です。
例えば、駐車場全体を撮影した映像の中に車が映っているとします。
その車の部分を選択して画面いっぱいに拡大するのがデジタルズームです。
スマートフォンで写真を指で広げて拡大する操作をイメージすると分かりやすいでしょう。
防犯カメラでは、
-
ライブ映像
-
録画映像
-
スマートフォン
-
パソコン
-
レコーダー
などでデジタルズームを利用できる機種があります。
デジタルズームすると画質はどうなる?
デジタルズームで重要なのが、拡大しても元の映像に記録されている情報量そのものは増えないという点です。
例えば、遠くにいる人物の顔が、
横20ピクセル×縦20ピクセル程度
でしか記録されていなかったとします。
これを画面いっぱいまで大きく表示しても、元々記録されている細かな情報が増えるわけではありません。
そのため、拡大するほど、
-
輪郭がぼやける
-
ギザギザが目立つ
-
ナンバーの文字が判別できない
-
顔の細部が分からない
といったことがあります。
つまり、
「大きく表示できる」ことと「細部まで確認できる」ことは別
です。
光学ズームとは?
光学ズームとは、レンズの焦点距離を変えて、被写体そのものを大きく撮影する方法です。
例えば、遠くにある門扉を撮影するとします。
広角側では、
駐車場全体+門扉
が映ります。
望遠側へズームすると、
門扉周辺を画面いっぱいに大きく撮影
できます。
デジタルズームのように撮影後の映像を単純に引き伸ばすのではなく、撮影する段階で対象を大きくセンサー上に写すことが大きな違いです。
デジタルズームと光学ズームの違い
最大の違いは、
デジタルズーム=撮った後に大きく見る
光学ズーム=撮るときから大きく写す
と考えると分かりやすいでしょう。

同じ「4倍ズーム」でも意味が違う
例えば、どちらも「4倍ズーム」と表示されていても、
光学4倍ズーム
と
デジタル4倍ズーム
では意味が異なります。
デジタル4倍ズームは、基本的には元映像の一部分を拡大表示します。
一方、光学4倍ズームはレンズによって画角を狭め、遠くの被写体をより大きく撮影します。
そのため、防犯用途で遠くの対象を詳しく記録したい場合は、「何倍ズームできるか」だけでなく、光学ズームなのかデジタルズームなのかを確認することが重要です。
高解像度カメラはデジタルズームに強い?
一般的には、高解像度の映像ほどデジタルズームした際に細部を残しやすくなります。
例えば同じ画角で、
200万画素
と
800万画素(4K)
で撮影した場合、800万画素の方が映像全体に多くのピクセルがあります。
そのため、映像の一部分を拡大した場合にも、より多くの画素情報が残っている可能性があります。
これが高解像度カメラのメリットの一つです。
ただし、800万画素なら何倍でも鮮明に拡大できるわけではありません。
被写体が画面内で極端に小さければ、高解像度でも限界があります。
4K映像を4倍に拡大すればフルHD画質?
ここは少し注意が必要です。
4K UHDは、
3840×2160
フルHDは、
1920×1080
です。
4K映像の中央部分を、横・縦それぞれ半分の範囲(1920×1080ピクセル)に切り出すと、その領域自体にはフルHD相当の画素数があります。
ただし、これを「4倍ズーム」と呼ぶ場合、メーカーやソフトウェアによって倍率の定義が面積基準なのか、縦横の倍率なのかが異なることがあります。
また実際の見え方は、
-
レンズ性能
-
ピント
-
ビットレート
-
圧縮
-
ノイズ
-
夜間性能
-
動体ブレ
などにも左右されます。
したがって、
「4Kならデジタル4倍ズームしても必ずフルHDと同じ画質」
とは考えない方がよいでしょう。
デジタルズームでナンバーは読める?
場合によります。
例えば、録画された車両のナンバープレート部分に十分な画素数が確保されていれば、デジタルズームによって文字を確認しやすくなることがあります。
しかし、元の映像でナンバープレートが数ピクセル程度しかなければ、拡大しても読めるようにはなりません。
ナンバー撮影では、
-
解像度
-
レンズ
-
焦点距離
-
撮影距離
-
設置角度
-
シャッタースピード
-
車両速度
-
夜間照明
-
ヘッドライト
などを考える必要があります。
「後からデジタルズームすれば何とかなる」という考え方は危険です。
デジタルズームで人物の顔は確認できる?
これも、元の映像にどの程度の情報が記録されているかによります。
人物が画面いっぱいに近い大きさで記録されていれば、デジタルズームで顔を詳しく確認できる可能性があります。
一方、広い駐車場の奥に小さく映っている人物を大きく拡大しても、顔の細部が記録されていなければ確認できません。
重要なのは、
カメラの画素数だけではなく、確認したい人物が画面内でどのくらいの大きさに映っているか
です。
光学ズームのメリット
光学ズームの大きなメリットは、離れた被写体を撮影時点で大きく写せることです。
例えば、
-
駐車場の出入口
-
敷地入口
-
長い通路
-
工場
-
倉庫
-
遠くの門扉
-
車両確認
などに向いています。
「広く見る」よりも、「離れた特定箇所を詳しく見る」ことを重視する場合に有効です。
光学ズームのデメリット
光学ズームにもデメリットがあります。
望遠側へズームすると、基本的に撮影できる範囲が狭くなります。
例えば駐車場入口の車両を大きく撮影すると、その周囲は画面から外れる可能性があります。
つまり、
遠くを大きく撮ること
と
広い範囲を撮ること
は両立しにくい場合があります。
そのため実際の防犯システムでは、全体監視用カメラ+特定箇所確認用カメラというように役割を分けることがあります。
バリフォーカルレンズと光学ズームの関係
バリフォーカルレンズも、焦点距離を変更して画角を調整します。
例えば、
2.8~12mm
のバリフォーカルレンズなら、広角側から望遠側まで撮影範囲を調整できます。
これは光学的に画角を変更するため、広い意味では光学ズームと同じ原理を利用しています。
ただし、防犯カメラではバリフォーカルレンズを、
「設置時に最適な画角へ調整し、その後は固定して使用する」
ケースが多くあります。
電動バリフォーカルと光学ズーム
電動バリフォーカルカメラでは、レコーダーやパソコンなどから焦点距離を調整できる機種があります。
例えば高所に設置したカメラでも、カメラ本体を直接操作せず、
広角 ←→ 望遠
を調整できます。
ただし、電動バリフォーカルだからといって、必ずしもPTZカメラのように常時ズーム操作することを前提としているわけではありません。
主な目的は、設置・調整時の画角合わせです。
PTZカメラの光学ズームとは?
PTZカメラでは、
Pan:左右
Tilt:上下
Zoom:拡大・縮小
を遠隔操作できます。
例えば30倍光学ズームなどに対応したPTZカメラなら、遠くの対象へカメラを向けて光学的に大きく撮影できます。
広い工場、駐車場、大規模施設などで、監視者が対象を追いながら確認する用途に適しています。
ただし、PTZカメラは向いている方向しか撮影できないため、固定カメラとの役割分担も重要です。
光学ズーム+デジタルズームもある
機種によっては、
光学ズーム+デジタルズーム
を組み合わせたものもあります。
例えば、
光学30倍+デジタル16倍
などです。
この場合、
まず光学ズームで被写体を大きく撮影し、
さらにデジタル処理で拡大する、
という仕組みです。
ただし、
30倍×16倍=480倍だから、480倍まで同じ画質で見える
という意味ではありません。
デジタルズーム部分には、元映像の解像度による限界があります。
録画映像では光学ズームできない?
ここも重要です。
すでに録画された映像に対して、後からレンズの焦点距離を変えることはできません。
例えばPTZカメラが広角状態で録画していた場合、事件発生後に、
「録画したときに戻って光学30倍で撮り直す」
ことはできません。
録画済み映像でできるのは、基本的には記録されている映像のデジタル拡大です。
そのため防犯用途では、
事件が起きたときに必要な対象が、録画映像に十分な大きさで残るよう設計すること
が重要です。
全体監視と詳細確認を分ける
広い駐車場を例にすると分かりやすいでしょう。
カメラ① 全体監視
広角レンズで、駐車場全体を撮影します。
誰がどこから入ってきたのか、車両がどこへ移動したのかなどを確認します。
カメラ② 詳細確認
望遠側のレンズで、駐車場入口など特定箇所を大きく撮影します。
人物や車両をより詳しく記録します。
1台の高画素カメラをデジタルズームしてすべてを確認しようとするより、目的によってカメラの役割を分けた方が確実な場合があります。
「高画素+デジタルズーム」と「光学ズーム」はどちらがいい?
どちらが優れているというものではなく、目的が異なります。
高画素+デジタルズーム
向いているのは、
-
広範囲を常時録画したい
-
事件後にさまざまな場所を確認したい
-
ある程度の拡大確認もしたい
場合です。
光学ズーム
向いているのは、
-
遠くの対象を大きく撮影したい
-
特定の出入口を詳しく見たい
-
車両などを大きく記録したい
場合です。
実際には両方の特徴を理解し、設置目的によって使い分けます。
防犯カメラではどちらを選べばいい?
判断するときは、
「何m先の、何を、どの程度まで確認したいのか」
を最初に決めることが重要です。
例えば、
「駐車場に車が入ったことが分かればよい」
のか、
「車種まで確認したい」
のか、
「ナンバープレートまで確認したい」
のかで必要なカメラは変わります。
単純に、
「ズーム倍率が大きいカメラを選ぶ」
のではなく、監視目的から逆算してレンズ・解像度・設置位置を決めます。
よくある質問
デジタルズームすると画素数は増えますか?
元映像に記録されている情報量そのものが増えるわけではありません。画面上で大きく表示する機能と考えると分かりやすいでしょう。
4Kカメラならデジタルズームに強いですか?
同じ画角・撮影条件なら、フルHDより多くの画素情報を持つため有利です。ただし、被写体が小さすぎれば4Kでも限界があります。
光学ズームなら画質は落ちませんか?
デジタルズームのように単純な画素拡大をするものではありません。ただし、実際の画質はレンズ性能、ピント、照明、センサーなどにも左右されます。
録画した後から光学ズームできますか?
通常はできません。録画された映像を後から拡大する場合はデジタルズームになります。
ナンバーを撮影するなら光学ズームが必要ですか?
望遠側のレンズが有効な場合がありますが、それだけでナンバー確認を保証するものではありません。撮影距離、車速、シャッタースピード、角度、夜間照明なども重要です。
まとめ
デジタルズームと光学ズームは、同じ「ズーム」でも仕組みが大きく異なります。
デジタルズーム
→ 撮影された映像の一部分を拡大する
→ 後から録画映像を拡大できる
→ 元映像にない細部情報は増えない
光学ズーム
→ レンズの焦点距離を変える
→ 撮影する段階で被写体を大きく写す
→ 遠くの特定箇所を詳しく撮影するのに有効
防犯カメラでは、「後から拡大すれば見えるだろう」と考えないことが重要です。
事件やトラブルが発生したときに必要な情報を残すには、何を・どの距離から・どのくらいの大きさで録画する必要があるのかを考えて、カメラの解像度・レンズ・設置位置を決める必要があります。
防犯設備士からのワンポイントアドバイス
高画素カメラが普及したことで、録画映像をデジタルズームして確認する機会は増えています。
しかし、デジタルズームには限界があります。
例えば800万画素カメラでも、広い駐車場全体を撮影していて、確認したい車両が画面のごく一部分にしか映っていなければ、ナンバーまで確認できるとは限りません。
重要な出入口など、「ここだけは詳しく記録したい」という場所では、適切な焦点距離で対象を最初から大きく撮影するという考え方が重要です。
防犯カメラでは、全体を見るカメラと、詳細を見るカメラを分けることで、事件発生時に役立つ映像を残しやすくなります。