IPカメラと通信容量
カメラ台数・ビットレート・回線速度の関係を解説
IPカメラを導入するとき、
「カメラを16台設置したら通信量はどのくらい必要?」
「4Kカメラはネット回線が速くないと使えない?」
「スマートフォンから遠隔監視すると、どのくらい通信する?」
といった疑問が出てきます。
IPカメラは映像をデジタルデータとしてネットワーク上で送信するため、通信容量(ネットワーク帯域)の確認が重要です。
ただし、ここで注意したいのが、
IPカメラの通信=すべてインターネット通信ではない
ということです。
例えば、同じ建物内のIPカメラからNVRへ録画するだけなら、基本的にはLAN内で映像データが流れます。
一方、スマートフォンや離れた事務所から映像を見る場合には、インターネット回線を使用します。
この記事では、IPカメラの通信量とビットレート、カメラ台数、LAN、インターネット回線との関係を分かりやすく解説します。
IPカメラは映像をネットワークで送る
IPカメラは、撮影した映像をデジタルデータに変換し、LANケーブルなどを通じて送信します。
一般的な構成では、
IPカメラ
↓
PoEスイッチ
↓
NVR(ネットワークビデオレコーダー)
という流れで映像を送ります。
例えばカメラ1台が4Mbpsの映像を送信しているなら、そのカメラからはおおむね4Mbpsを基準とした映像データがネットワーク上を流れます。
カメラが増えれば、その分ネットワーク全体で扱う映像データも増えていきます。
通信容量を決める「ビットレート」とは?
IPカメラの通信量を考えるうえで重要なのが、ビットレートです。
ビットレートとは、
1秒間にどのくらいの映像データを送信するか
を表した数値です。
例えば、
2Mbps → 1秒間に約2メガビット
4Mbps → 1秒間に約4メガビット
8Mbps → 1秒間に約8メガビット
という意味です。
したがって、IPカメラの通信容量を計算するときは、単純に「500万画素だから○Mbps」と考えるのではなく、実際に設定されているビットレートを確認することが重要です。
カメラ台数が増えると通信量も増える

ただし、これは映像ストリームを単純合計した理論的な目安です。
実際のネットワークでは、通信プロトコルによるオーバーヘッド や一時的な変動などもあるため、計算値ぎりぎりではなく余裕を持ったネットワーク設計が必要です。
「16台×4Mbps=64Mbps」なら100MbpsのLANで十分?
理論上の映像ビットレートだけを見ると64Mbpsです。
しかし、
「64Mbpsだから100Mbpsのネットワークで問題ない」
と単純には判断しない方がよいでしょう。
実際には、
-
通信のオーバーヘッド
-
VBRによるビットレート変動
-
ライブ表示
-
再生
-
バックアップ
-
その他のネットワーク通信
なども発生します。
特に多台数のIPカメラでは、ネットワークの一部分に通信が集中することがあります。
そのため現在のシステムでは、ギガビット対応のスイッチやLAN環境を使用するケースが一般的です。
LAN内通信とインターネット通信は別
ここはIPカメラで非常に重要です。
例えば、
IPカメラ16台
↓
PoEスイッチ
↓
NVR
というシステムが同じ建物内にあるとします。
カメラ映像をNVRへ送って録画する通信は、基本的に建物内のLANで完結します。
そのため、
カメラ16台 × 4Mbps = 64Mbps
だからといって、常時64Mbpsをインターネットへアップロードしているとは限りません。
これは、
LAN内の通信容量
と
インターネット回線の通信容量
を分けて考える必要があるということです。
インターネットを使うのはどんなとき?
代表的なのは、遠隔監視です。
例えば店舗に設置したカメラを、
-
自宅のパソコン
-
本社
-
スマートフォン
-
タブレット
などから確認する場合です。
このとき、設置場所からインターネットを経由して映像を送信します。
そのため、遠隔監視では現地のインターネット回線性能が重要になります。
遠隔監視では「上り回線速度」が重要
インターネット回線には、
下り(ダウンロード)
と
上り(アップロード)
があります。
防犯カメラの設置場所から外部のスマートフォンへ映像を送る場合、主に重要なのは設置場所側の上り回線です。
イメージすると、
防犯カメラ
→ レコーダー
→ ルーター
→【上り】→ インターネット
→ スマートフォン
となります。
そのため、
「インターネットが100Mbps出ているから大丈夫」
と思っていても、それが下り速度だけなら、防犯カメラの遠隔監視性能を判断するには不十分です。
上り速度を確認することが重要です。
上り5Mbpsで複数台を遠隔監視するとどうなる?
例えば、現地の実効上り速度が5Mbps程度しかないとします。
そこから複数台の高画質映像を同時に送ろうとすると、回線容量が不足する可能性があります。
その結果、
-
映像がカクカクする
-
表示まで時間がかかる
-
音声が途切れる
-
映像が停止する
-
画質が自動的に低下する
などの現象が発生することがあります。
特に多画面で複数カメラを同時表示すると、必要な通信量が大きくなります。
光回線なら必ず大丈夫?
光回線は一般的に高速ですが、契約上の最大速度がそのまま実際の通信速度になるわけではありません。
インターネット回線の多くはベストエフォート型です。
実際の通信速度は、
-
地域
-
時間帯
-
回線混雑
-
プロバイダー
-
ルーター
-
LAN環境
などによって変化します。
したがって、防犯カメラの遠隔監視を導入する場合は、契約上の「最大1Gbps」といった数字だけでなく、現地で実際の上り速度を測定することが重要です。
ホームルーターでも遠隔監視できる?
ホームルーターでも、防犯カメラの遠隔監視ができる場合があります。
ただし、固定回線以上に地域や時間帯、電波状況などによって通信速度が変動する可能性があります。
特に確認したいのが、やはり上り速度です。
例えば同じホームルーターでも、
地域A:上り5Mbps
地域B:上り50Mbps
のように大きな差が出ることがあります。
そのため、
「同じホームルーターで別の現場では問題なかったから、今回も大丈夫」
とは限りません。
遠隔監視を前提にする場合は、実際の設置場所で通信速度を確認することをおすすめします。
メインストリームとサブストリームを使い分ける
通信量を抑えるため、防犯カメラではメインストリームとサブストリームを使い分けることがあります。
メインストリーム
高解像度・高ビットレートの映像です。
主に、
NVRへの高画質録画
に使用します。
サブストリーム
解像度・フレームレート・ビットレートなどを抑えた軽い映像です。
主に、
スマートフォンやパソコンからの遠隔監視
に利用します。
例えば、
現地録画:500万画素・高画質
スマホ表示:低解像度・低ビットレート
という使い分けができます。
これによって、録画品質を維持しながらインターネット通信量を抑えることができます。
16分割表示ではサブストリームが重要
スマートフォンやパソコンで16台のカメラを同時表示するとします。
仮にメインストリームが1台4Mbpsなら、
4Mbps × 16台 = 64Mbps
もの映像データになります。
一方、遠隔表示用のサブストリームを仮に1台256Kbps程度に設定した場合、
0.256Mbps × 16台 ≒ 4.1Mbps
です。
このように、サブストリームを使用すると通信量を大幅に抑えられます。
そして、確認したいカメラを1画面表示したときだけ高画質ストリームへ切り替える、といった運用も可能です。
※実際のストリーム切替方法や設定可能値は機種・ソフトウェアによって異なります。
スマートフォンの通信容量にも注意
外出先からモバイル通信で防犯カメラを長時間見る場合は、スマートフォン側のデータ通信量にも注意が必要です。
例えば2Mbpsの映像を1時間連続して受信した場合、単純計算では、
2Mbps ÷ 8 × 3,600秒 ≒ 900MB
となります。
4Mbpsなら、
約1.8GB/時間
です。
ただし、実際にはサブストリームやVBRなどによって通信量は変わります。
短時間確認する程度なら問題になりにくくても、モバイル回線で長時間ライブ映像を表示し続けると、通信容量を大きく消費する可能性があります。
録画容量と通信容量はビットレートでつながっている
ビットレートは、
ネットワーク通信量
だけでなく、
HDD録画容量
にも関係します。
例えば4Mbpsなら、単純計算で24時間あたり約43GBです。
つまり、ビットレートを上げると、
通信量が増える+HDD使用量も増える
という関係があります。
IPカメラシステムでは、通信と録画容量を別々に考えるのではなく、ビットレートを中心にまとめて設計すると分かりやすくなります。
PoEスイッチの通信容量にも注意
IPカメラを多数接続する場合は、PoEスイッチの性能も重要です。
PoEスイッチでは、
① 電源供給能力
と
② ネットワーク通信能力
を分けて確認します。
例えば16台のIPカメラを接続する場合、電源容量が足りていても、ネットワーク側の構成が適切でなければ映像通信に影響する可能性があります。
特に確認したいのが、NVR側へ映像をまとめて送るアップリンクポートです。
複数台の映像が1本の通信経路に集中するため、カメラ台数と合計ビットレートを考えて選定します。
NVRにも受信帯域の上限がある
もう一つ重要なのがNVRです。
例えば16chのNVRなら、
「16台接続できる=どんな設定のカメラでも16台接続できる」
とは限りません。
NVRには機種ごとに、
最大入力帯域・最大受信帯域
などの上限があります。
例えば、
8Mbps × 16台 = 128Mbps
の映像を受信するなら、それに対応できるNVRが必要です。
高画素・高fps・高ビットレートのカメラを多数使用する場合は、チャンネル数だけでなく受信帯域も確認することが重要です。
IPカメラの通信設計で確認するポイント
IPカメラシステムを設計する際は、次の順番で考えると分かりやすくなります。
① 1台あたりのビットレート
↓
② カメラ台数
↓
③ 合計ビットレート
↓
④ PoEスイッチ・LANの帯域
↓
⑤ NVRの最大受信帯域
↓
⑥ 遠隔監視する台数とストリーム
↓
⑦ インターネット上り速度
このように、カメラだけでなく映像が通る経路全体を確認します。
通信速度ギリギリで設計しない
例えば合計映像ビットレートが80Mbpsだからといって、100Mbpsの通信経路で「20Mbps余っているから大丈夫」と判断するのはおすすめできません。
実際の通信には映像以外のデータも含まれますし、VBRでは瞬間的にビットレートが増える場合があります。
また、将来カメラを追加する可能性もあります。
防犯カメラは24時間365日連続運用するケースが多いため、通信容量には十分な余裕を持たせることが重要です。
IPカメラの通信トラブルで確認したいこと
映像がカクカクする、途切れる、表示が遅いといった場合は、単純に「インターネットが遅い」とは限りません。
確認するポイントには、
-
カメラのビットレート
-
カメラ台数
-
LANケーブル
-
PoEスイッチ
-
スイッチ間のアップリンク
-
NVRの受信帯域
-
ルーター
-
インターネット上り速度
-
遠隔監視時のストリーム設定
などがあります。
現地録画まで不安定なのか、遠隔監視だけが不安定なのかによって、原因を切り分けることが重要です。
よくある質問
IPカメラを使うにはインターネットが必要ですか?
必ずしも必要ではありません。同一LAN内のカメラをNVRへ録画するシステムなら、インターネットがなくても運用できる構成があります。ただし、外部からの遠隔監視などにはインターネット接続が必要です。
IPカメラを16台設置するとインターネット通信量も16倍になりますか?
現地のNVRへ録画するだけなら、通常は主にLAN内の通信です。遠隔監視で16台を同時表示する場合は、外部へ送る映像ストリームに応じてインターネット通信量が増えます。
下り速度が速ければ遠隔監視できますか?
設置場所から映像を外部へ送信するため、現地側では特に上り速度が重要です。
4Kカメラには1Gbps回線が必要ですか?
カメラ1台だけを見て一律には決められません。カメラ台数、ビットレート、LAN構成、遠隔監視方法などを合わせて判断します。
Wi-Fiやホームルーターでも使えますか?
使用できる場合があります。ただし、無線環境やモバイル回線は通信速度が変動しやすいため、設置環境での実測確認が重要です。
まとめ
IPカメラの通信容量を考えるときは、
「何万画素のカメラか」だけではなく、「何Mbpsの映像を何台送るのか」
を考えることが重要です。
基本的には、
1台あたりのビットレート × カメラ台数 = 映像通信量の基本
となります。
そして、
現地録画 → LAN・PoEスイッチ・NVRの通信容量
遠隔監視 → インターネット回線、特に現地側の上り速度
と分けて考えると分かりやすくなります。
高解像度IPカメラを多数設置する場合は、カメラだけでなく、PoEスイッチ・LAN・NVR・ルーター・インターネット回線まで含めたシステム全体の設計が重要です。
防犯設備士からのワンポイントアドバイス
IPカメラの通信トラブルでは、まず、
「現地の録画映像もカクカクしているのか、それとも遠隔監視だけがカクカクしているのか」
を確認すると原因を切り分けやすくなります。
現地録画は正常なのにスマートフォンや遠隔PCだけ映像が途切れる場合は、インターネット回線や遠隔監視用ストリームなどを確認します。
一方、現地のNVRに録画された映像自体が途切れている場合は、LAN・PoEスイッチ・NVRの受信帯域など、現地ネットワーク側を確認する必要があります。
特にホームルーターはベストエフォート型の通信サービスで、同じ機種でも地域や時間帯によって実効速度が大きく変わることがあります。
遠隔監視では下り速度だけを見るのではなく、実際の設置場所で上り速度を測定することをおすすめします。