IPカメラとLANケーブル規格
Cat5e・Cat6・Cat6Aの違いと選び方
IPカメラは、LANケーブルを使って映像データを送信する防犯カメラです。
さらにPoE対応のIPカメラなら、1本のLANケーブルで、
映像などのデータ通信 + カメラへの電源供給
を行うことができます。
そこで気になるのが、LANケーブルの規格です。
LANケーブルには、
Cat5e(カテゴリー5e)
Cat6(カテゴリー6)
Cat6A(カテゴリー6A)
などがあります。
「4KのIPカメラならCat6が必要?」
「Cat5eでは画質が落ちる?」
「既設のCat5eをCat6に交換した方がいい?」
と疑問に思う方もいるでしょう。
この記事では、IPカメラで使用するLANケーブルの規格と、通信速度・PoE・配線距離との関係について分かりやすく解説します。
IPカメラはLANケーブルで映像を送る
IPカメラでは、撮影した映像をデジタルデータとしてネットワーク上へ送信します。
一般的には、
IPカメラ
↓ LANケーブル
PoEスイッチ
↓ LANケーブル
NVR
という構成になります。
AHDカメラなどで使用する同軸ケーブルとは異なり、IPカメラではEthernetによるネットワーク通信を利用します。
そのため、IPカメラシステムではLANケーブルの規格や施工品質もシステムの安定性に関係します。
LANケーブルの「Cat」とは?
LANケーブルに表示されている「Cat」は、
Category(カテゴリー)
の略です。
規格によって対応する通信性能などが異なります。
代表的なものを簡単に比較すると、次のようになります。

Cat5eとは?
Cat5eは、1Gbps(1000BASE-T)に対応する代表的なLANケーブル規格です。
「古い規格だからIPカメラには使えないのでは?」
と思われるかもしれませんが、一般的なIPカメラシステムでは現在でも利用できるケースがあります。
例えば、1台のIPカメラが4Mbpsで通信している場合、
16台 × 4Mbps = 64Mbps
です。
カメラ1台単位で見れば、ギガビット通信の能力に対して映像ビットレートはかなり小さいことが分かります。
そのため、Cat5eだから4Kカメラが使えない、というわけではありません。
Cat6とは?
Cat6は、Cat5eより高い周波数帯域に対応した規格です。
Cat5eが100MHzなのに対して、
Cat6は250MHz
です。
一般的な1000BASE-TではCat5eでも対応できますが、Cat6はクロストークなどへの対策が強化されています。
新しくIPカメラ用のLAN配線を施工する場合には、将来性や配線環境などを考えてCat6を選択する方法があります。
ただし、
「Cat5eからCat6にすれば防犯カメラの映像が高画質になる」
というものではありません。
この点は重要です。
Cat6Aとは?
Cat6Aは、
10Gbps(10GBASE-T)を最大100mで利用できる規格
として、大容量通信を必要とするネットワークで使用されています。
伝送帯域は500MHzです。
例えば、
-
大規模施設
-
多台数IPカメラ
-
サーバー
-
高速ネットワーク
-
複数のネットワーク機器が集中する幹線
などでは、Cat6Aを検討する場合があります。
ただし、一般的な数台~十数台程度の防犯カメラで、すべてのカメラ配線をCat6Aにする必要があるとは限りません。
4KカメラならCat6が必要?
必ずしも必要ではありません。
ここで重要なのが、解像度と通信速度を混同しないことです。
例えば4Kカメラでも、圧縮された映像ストリームが8Mbpsなら、ネットワーク上を流れる映像データは基本的にそのビットレートを基準に考えます。
したがって、
4Kカメラ = 1Gbpsの映像を常時送っている
わけではありません。
Cat5eでも1Gbps Ethernetに対応しているため、カメラ1台の映像通信という観点では十分なケースが多くあります。
Cat6にすると映像はきれいになる?
これもよくある誤解です。
正常に通信できているCat5eをCat6へ交換したからといって、
500万画素が800万画素になる
映像の解像度が上がる
録画映像の細部が増える
ということはありません。
映像品質を左右する主な要素は、
-
カメラ解像度
-
ビットレート
-
フレームレート
-
圧縮方式
-
レンズ
-
イメージセンサー
-
シャッタースピード
などです。
LANケーブルは、その映像データを安定して伝送するための通信経路です。
必要な通信性能を満たして正常に伝送できているなら、上位カテゴリーへ交換するだけでカメラ映像そのものが高画質になるわけではありません。
では、なぜCat6を選ぶの?
新規施工でCat6を選ぶ理由は、単純な「画質向上」ではありません。
例えば、
-
将来のネットワーク高速化
-
ノイズやクロストークへの余裕
-
カメラ増設への対応
-
防犯カメラ以外のネットワーク利用
などを考慮して選択します。
防犯カメラ設備は10年前後使用されることもあります。
そのため新規配線では、現在のカメラだけではなく、将来の設備更新も考えてLANケーブルを選ぶことが大切です。
IPカメラでは「カメラ1台」より「通信が集中する場所」が重要
ネットワーク設計では、ここが非常に重要です。
例えば16台のIPカメラが、それぞれ4Mbpsで通信するとします。
各カメラからスイッチまでの通信は、
4Mbps/台
です。
しかし、16台分の映像がNVRへ向かうアップリンクでは、
4Mbps × 16台 = 64Mbps
になります。
つまり、多台数システムでは個々のカメラ配線だけでなく、
PoEスイッチ → NVR
PoEスイッチ → 基幹スイッチ
など、複数台の映像が集中する経路を確認する必要があります。
32台・64台になるとさらに注意
例えば1台8MbpsのIPカメラを使用するとします。
16台 → 128Mbps
32台 → 256Mbps
64台 → 512Mbps
です。
カメラ台数が増えるほど、映像が集中するネットワーク部分の通信量が大きくなります。
さらに、
-
ライブ表示
-
録画再生
-
バックアップ
-
VBRによる変動
-
その他のネットワーク通信
などもあります。
そのため、大規模なIPカメラシステムではLANケーブルのカテゴリーだけでなく、ネットワーク構成そのものを設計することが重要です。
LANケーブルは何mまで使える?
一般的なEthernetのメタル配線では、標準的なチャネル長は最大100mが基本です。
一般に、
機器間の水平ケーブル90m+両端のパッチコード等を含めて合計100m
という構成が基準になります。
IPカメラでも、この100mを一つの目安として考えます。
「100mを少し超えただけだから大丈夫だろう」
と安易に考えるのはおすすめできません。
100mを超える場合はどうする?
カメラまでの配線距離が100mを超える場合には、
-
中継用ネットワーク機器を設置する
-
PoEエクステンダーを使用する
-
光ファイバーを使用する
-
長距離PoEに対応した機器を使用する
などの方法があります。
ただし、長距離PoEなどはメーカー独自方式や通信速度に制限がある場合もあります。
特に工場、倉庫、学校、大規模駐車場などでは100mを超えることがあるため、配線距離を先に確認してシステムを設計することが重要です。
PoEでは通信だけでなく電源もLANケーブルを通る
PoE対応IPカメラでは、LANケーブルを使ってデータ通信だけでなく電力も供給します。
つまりLANケーブル1本で、
映像・制御などの通信
と
電源
を扱います。
そのためPoEシステムでは、
通信できれば何でもよい
という考え方では不十分です。
ケーブル品質、導体、長さ、接続部などが重要になります。
PoE・PoE+・PoE++とは?
PoEにも複数の規格があります。
代表的には、
IEEE 802.3af(PoE)
IEEE 802.3at(PoE+)
IEEE 802.3bt(PoE++)
があります。
高機能なPTZカメラ、ヒーター搭載カメラ、赤外線照射能力の大きなカメラなどでは、一般的な固定カメラより大きな電力を必要とする場合があります。
そのため、
LANケーブルだけでなく、PoEスイッチがカメラに必要な電力を供給できるか
も確認する必要があります。
PoEスイッチは「1ポートの電力」と「総電力」を確認
例えば16ポートのPoEスイッチだからといって、すべてのポートで最大電力を同時に供給できるとは限りません。
確認したいのは、
1ポートあたりの最大供給電力
と
PoEスイッチ全体の電力予算(PoE Budget)
です。
例えば消費電力10Wのカメラを16台なら、
10W × 16台 = 160W
です。
スイッチ側が必要な電力を供給できるか確認します。
LANケーブル規格と同時に、PoEの電力設計も重要です。
安価なLANケーブルには注意
LANケーブルは外見だけでは品質を判断しにくい製品です。
特にPoEで注意したいのが、導体です。
一般的なネットワーク施工では、純銅導体の規格適合ケーブルを選ぶことが重要です。
安価な製品の中には、CCA(Copper Clad Aluminum:銅被覆アルミ)などが使われているものがあります。
CCAは純銅より電気抵抗が大きいため、特にPoEで電力を送る用途では電圧降下や発熱などの問題につながる可能性があります。
防犯カメラは24時間連続稼働するため、価格だけでLANケーブルを選ばないことをおすすめします。
屋外では屋外用LANケーブルを使用する
屋外にIPカメラを設置する場合、LANケーブルも設置環境に合わせる必要があります。
一般的な屋内用LANケーブルをそのまま屋外へ露出配線すると、
-
紫外線
-
雨
-
温度変化
-
湿気
などによって劣化する可能性があります。
屋外露出部分では、屋外用LANケーブルや適切な保護配管などを使用します。
LANケーブルのコネクタ部分も重要
LAN配線では、ケーブル本体だけでなくRJ45コネクタやジャックの施工品質も重要です。
例えば、
-
圧着不良
-
結線ミス
-
接触不良
-
芯線のほどきすぎ
-
規格の合わない部材
などがあると、通信が不安定になることがあります。
「Cat6ケーブルを使ったからCat6配線になった」とは限りません。
ケーブル・コネクタ・ジャック・施工方法を含めて規格を満たすことが必要です。
Cat6ならノイズの影響を受けない?
Cat6はCat5eよりクロストーク対策などが強化されていますが、
Cat6なら電気的なノイズの影響をまったく受けない
という意味ではありません。
工場などでは、
-
モーター
-
インバーター
-
大型機械
-
高圧設備
-
電力ケーブル
などが存在します。
LAN配線では、これらとの離隔や配線ルートを考えることが重要です。
ノイズ環境が厳しい場合には、光ファイバーなど別の伝送方法を検討することもあります。
STPとUTPの違い
LANケーブルには、
UTP(Unshielded Twisted Pair)
と
STPなどのシールド付きツイストペア
があります。
一般的なオフィスや住宅ではUTPが広く使用されています。
一方、ノイズ環境などによってシールド付きケーブルを検討する場合があります。
ただし、シールドケーブルは、
「STPに交換すれば必ずノイズがなくなる」
というものではありません。
シールドを適切に機能させるには、対応するコネクタや機器、接地を含めたシステムとしての施工が必要です。
既設Cat5eはCat6へ交換した方がいい?
既存のCat5e配線が、
-
規格に適合している
-
配線距離に問題がない
-
劣化していない
-
通信が安定している
-
必要な通信速度を満たしている
のであれば、IPカメラを高画素化するだけで必ずCat6へ交換しなければならないわけではありません。
例えば200万画素から800万画素へカメラを交換する場合でも、実際に必要となるビットレートとネットワーク帯域を確認して判断します。
「4KだからCat6へ交換」という単純な考え方ではありません。
新規工事ならどのLANケーブルがおすすめ?
一般的なIPカメラの新規施工なら、Cat6を基本候補として検討しやすいでしょう。
理由は、現在必要な通信速度だけではありません。
防犯カメラ設備は長期間使用するため、
-
将来カメラを高画素化する
-
カメラ台数を増やす
-
ネットワーク機器を更新する
-
他のネットワーク用途にも利用する
可能性があります。
一方、大規模施設や10Gbpsの基幹ネットワークまで想定する場合にはCat6Aなどを検討します。
重要なのは、上位規格を選べば必ず良いということではなく、使用目的・距離・施工環境・将来性から判断することです。
LANケーブル選びで確認したいポイント
IPカメラ用LANケーブルを選ぶ際は、次の点を確認します。
-
必要な通信速度
-
カメラ台数と合計ビットレート
-
配線距離
-
PoEの電力
-
屋内か屋外か
-
周囲のノイズ環境
-
将来のカメラ増設や高画素化
-
ケーブル・コネクタを含めた施工品質
LANケーブル単体ではなく、IPカメラシステム全体から選定することが重要です。
よくある質問
IPカメラにはCat5eでも使えますか?
はい。Cat5eは1Gbps Ethernetに対応しており、一般的なIPカメラで使用できるケースは多くあります。ただし、カメラ台数、ビットレート、配線距離、PoE条件などを確認する必要があります。
4KカメラならCat6が必要ですか?
必ずしも必要ではありません。4Kという解像度だけでLANケーブル規格を決めるのではなく、実際のビットレートやネットワーク構成から判断します。
Cat5eからCat6にすると画質は良くなりますか?
正常に通信できている場合、LANケーブルをCat6に交換するだけでカメラの解像度や録画画質が上がるわけではありません。
Cat6とCat6AならCat6Aの方がいいですか?
用途によります。Cat6Aは10Gbpsを100mで利用できる高性能な規格ですが、一般的なIPカメラシステムで必ず必要とは限りません。
LANケーブルは100mを超えても使えますか?
標準Ethernetでは100mが基本的な上限です。100mを超える場合は、中継機器、光ファイバー、長距離伝送対応機器などを検討します。
まとめ
IPカメラで使用するLANケーブルには、Cat5e・Cat6・Cat6Aなどの規格があります。
大まかには、
Cat5e → 1Gbps対応。一般的なIPカメラでも使用可能
Cat6 → 1Gbps用途に十分な性能を持ち、新規施工で選びやすい
Cat6A → 10Gbps・100mに対応し、大容量ネットワークなどで検討
と考えると分かりやすいでしょう。
ただし、防犯カメラでは、
「4KだからCat6」
「Cat6にすれば映像がきれいになる」
という考え方ではありません。
重要なのは、
カメラのビットレート × 台数
から必要な通信容量を考え、さらにPoE、配線距離、ネットワーク構成、設置環境まで含めてLAN配線を設計することです。
防犯設備士からのワンポイントアドバイス
IPカメラのLAN配線では、カテゴリーの数字だけで判断しないことが重要です。
例えばCat6と表示されたケーブルを使用していても、RJ45コネクタの施工不良や長すぎる配線、屋外での劣化などがあれば、安定した通信は期待できません。
また、PoEではLANケーブルが通信線であると同時にカメラの電源線にもなります。
そのため弊社では、カメラの画素数だけではなく、
通信量・カメラ台数・配線距離・PoE電力・設置環境
まで考えてLAN配線を選定することが重要だと考えています。
特に工場や大規模施設では、カメラ1台ごとの通信量より、複数台の映像が集中するアップリンク部分がボトルネックになる場合があります。
IPカメラはカメラ単体ではなく、LANを含めた一つのネットワークシステムとして考えましょう。