P2P方式での遠隔監視とは?
防犯カメラをスマートフォンから見る仕組みを解説
現在の防犯カメラでは、店舗や事務所に設置したカメラを、スマートフォンや離れた場所のパソコンから確認する「遠隔監視」が一般的になっています。
以前は、遠隔監視を行うために、
-
固定IPアドレス
-
DDNS
-
ルーターのポート開放
などのネットワーク設定が必要になることがありました。
しかし現在は、P2P方式を利用することで、比較的簡単に遠隔監視できる防犯カメラシステムが増えています。
例えばレコーダーをインターネットへ接続し、スマートフォンアプリで機器のQRコードを読み取るだけで登録できる製品もあります。
では、なぜQRコードを読み取るだけで、外出先から防犯カメラを見ることができるのでしょうか。
この記事では、防犯カメラのP2P方式による遠隔監視の仕組みやメリット、注意点について分かりやすく解説します。
IPカメラは映像をネットワークで送る
IPカメラは、撮影した映像をデジタルデータに変換し、LANケーブルなどを通じて送信します。
一般的な構成では、
IPカメラ
↓
PoEスイッチ
↓
NVR(ネットワークビデオレコーダー)
という流れで映像を送ります。
例えばカメラ1台が4Mbpsの映像を送信しているなら、そのカメラからはおおむね4Mbpsを基準とした映像データがネットワーク上を流れます。
カメラが増えれば、その分ネットワーク全体で扱う映像データも増えていきます。
P2P方式とは?
P2Pは、Peer to Peer(ピア・ツー・ピア)の略です。
一般的には、ネットワーク上の機器同士が通信する仕組みを指します。
防犯カメラの分野で「P2P方式」と呼ばれている遠隔監視では、多くの場合、メーカーなどが提供するP2P・クラウド系の接続サービスを利用して、スマートフォンやパソコンとレコーダー等の接続を成立させます。
そのため、
P2P=映像が必ず完全に端末同士だけで直接通信する
という意味ではありません。
接続環境によっては、中継サーバーを経由して映像通信が行われる場合もあります。
ここは「P2P」という名称から誤解されやすいポイントです。
P2P方式による遠隔監視の仕組み
一般的な構成を簡単にすると、
防犯カメラ
↓
NVR・DVR
↓
ルーター
↓
インターネット
↓
P2P接続サービス
↓
スマートフォン・パソコン
となります。
レコーダーをインターネットへ接続すると、レコーダー側からメーカー等のP2Pサービスへ通信を開始します。
一方、スマートフォンアプリから対象機器へ接続すると、P2Pサービスが機器を識別して通信を成立させます。
環境によっては端末と機器間で直接通信し、直接接続が難しい場合には中継サーバーを利用するなど、製品ごとに異なる仕組みが採用されています。
なぜポート開放をしなくても接続できる?
従来型の遠隔監視では、外部のスマートフォンから店舗のレコーダーへ接続するため、
インターネット
↓
ルーター
↓
レコーダー
という「外部から内部へ入る通信」を許可する設定が必要になることがありました。
その代表例がポート開放です。
一方、P2P方式では、レコーダー側から外部のP2Pサービスへ通信を開始し、その仕組みを利用して遠隔接続を成立させる方式が一般的です。
そのため、利用者がルーターへ個別にポート開放を設定しなくても利用できる製品が増えています。
固定IPアドレスがなくても利用できる
P2P方式の大きなメリットの一つです。
従来方式では、インターネット側からレコーダーを特定するため、
固定グローバルIPアドレス
または
DDNS
などを利用することがありました。
P2P方式では、機器固有のIDなどを利用して接続先を識別するため、一般的には利用者側で固定グローバルIPアドレスを用意しなくても遠隔監視できます。
そのため、遠隔監視を導入する際のネットワーク設定を大幅に簡略化できます。
QRコードを読むだけで登録できるのはなぜ?
現在の防犯カメラでは、
「スマートフォンアプリでレコーダーのQRコードを読み取る」
という登録方法がよく使われています。
QRコードには、レコーダーをP2Pサービス上で識別するための機器IDなど、登録に必要な情報が含まれています。
スマートフォンで読み取ることで、
「どのレコーダーへ接続するのか」
をアプリへ簡単に登録できます。
その後、必要な認証情報を設定・入力することで、遠隔監視を行います。
つまりQRコード自体が映像を送っているわけではなく、接続する機器を登録するための情報を簡単に入力する仕組みと考えると分かりやすいでしょう。
P2P方式のメリット
P2P方式には、主に次のようなメリットがあります。
固定IPが不要
固定グローバルIPアドレスを契約しなくても遠隔監視できる製品が一般的です。
ポート開放が不要
ルーターへ複雑なポート転送設定をしなくても利用できる場合が多くなっています。
スマートフォンへの登録が簡単
QRコードや機器IDを利用して登録できる製品が多く、導入作業を簡略化できます。
外出先から確認できる
店舗・事務所・工場・住宅などの映像を、離れた場所から確認できます。
複数拠点を確認できる
対応アプリやソフトウェアなら、複数の店舗や事業所のレコーダーを登録して一元的に確認することもできます。
P2P方式とポート開放方式の違い

P2P方式は簡単に導入できる反面、メーカー側のサービス基盤にも依存する点は理解しておく必要があります。
P2Pならどんなインターネット回線でも使える?
P2P方式だからといって、すべてのインターネット環境で必ず遠隔監視できるわけではありません。
遠隔監視では、レコーダー側からインターネットへ映像を送信する必要があります。
そのため、
-
回線速度
-
ルーター
-
ファイアウォール
-
ネットワークの通信制限
-
P2Pサービスへの接続可否
などの影響を受けます。
特に企業や病院などのネットワークでは、セキュリティポリシーによって外部サービスとの通信が制限されていることがあります。
遠隔監視では「上り速度」が重要
防犯カメラの遠隔監視で特に重要なのが、カメラ設置場所側の上り通信速度です。
例えば店舗の映像を自宅のスマートフォンで見る場合、
店舗
↓ 上り通信
インターネット
↓
スマートフォン
という方向に映像を送ります。
そのため、店舗側の下り速度が速くても、上り速度が極端に遅ければ遠隔映像が不安定になることがあります。
上り速度が遅いとどうなる?
通信容量が不足すると、
-
映像がカクカクする
-
映像が止まる
-
表示開始まで時間がかかる
-
複数台を同時表示できない
-
音声が途切れる
といった現象が発生する可能性があります。
特に高解像度映像を複数台同時に表示すると、必要な通信量が増えます。
そこで重要になるのが、サブストリームです。
P2P遠隔監視とサブストリーム
防犯カメラでは、
メインストリーム
と
サブストリーム
を使い分けることがあります。
例えば、
メインストリーム → 500万画素などの高画質でNVRへ録画
サブストリーム → 解像度やビットレートを下げてスマートフォンへ送信
という使い方です。
これにより、現地には高画質映像を残しながら、遠隔監視時の通信量を抑えられます。
多画面表示では軽いサブストリームを使用し、確認したいカメラを1画面表示したときに高画質へ切り替えるシステムもあります。
P2P方式ならホームルーターでも遠隔監視できる?
対応できる場合があります。
固定グローバルIPやポート開放を必要としないP2P方式は、ホームルーターを利用した防犯カメラの遠隔監視とも相性があります。
ただし、
「P2Pだからホームルーターなら何でも使える」
というわけではありません。
通信事業者やネットワーク構成によっては、P2P接続が正常に利用できない場合があります。
また、ホームルーターは地域・電波状況・時間帯などによって通信速度が大きく変化することがあります。
導入前には、実際の設置場所で上り速度と接続可否を確認することが重要です。
P2P方式のセキュリティは大丈夫?
P2P方式はインターネットを利用するため、セキュリティ対策が重要です。
最低限、
-
初期パスワードを変更する
-
推測されにくい強いパスワードを使用する
-
ファームウェアを適切に更新する
-
不要になった利用者アカウントを削除する
-
スマートフォンを紛失した場合の対策を行う
-
信頼できるメーカー・サービスを選ぶ
といった対策が必要です。
対応製品であれば、多要素認証などの追加セキュリティ機能も活用するとよいでしょう。
QRコードの写真を公開しない
意外と見落としやすい注意点です。
P2P登録用QRコードには、機器を識別する情報が含まれている場合があります。
そのため、
レコーダーの設定画面を撮影した写真をSNSへ掲載する
QRコードが映った写真をホームページへ掲載する
といった行為は避けた方が安全です。
QRコードだけで必ず映像へアクセスできるとは限りませんが、機器を識別する情報を不用意に第三者へ公開しないことが基本です。
P2P方式のデメリット
便利なP2P方式にも注意点があります。
メーカーのサービスに依存する
P2P遠隔監視は、メーカー等が運用する接続サービスを利用するものが一般的です。
そのためサービスが停止・終了すると、遠隔監視へ影響する可能性があります。
インターネット障害時には遠隔監視できない
現地で録画を続けられる構成でも、インターネット回線が切断されれば外部からの遠隔監視はできません。
通信速度に左右される
特に設置場所側の上り速度が不足すると、映像表示が不安定になることがあります。
セキュリティは製品によって異なる
通信の暗号化、認証方法、アップデート提供期間などは製品・メーカーによって異なります。
インターネットが切れても録画はできる?
NVRやDVRにHDDを搭載し、現地で録画する一般的な構成なら、インターネット回線が切れたからといって必ず録画まで停止するわけではありません。
例えば、
カメラ → NVR → HDD
までが現地で正常に動作していれば、インターネット障害中も録画を継続できる構成があります。
一方、
スマートフォンからの遠隔監視
はインターネットを利用するため、回線が復旧するまで利用できません。
これはクラウド録画との違いを考えるうえでも重要です。
P2P方式とクラウド録画は別物
P2P方式とクラウド録画は混同されることがありますが、同じものではありません。
P2P方式 → 遠隔地のスマートフォンなどと防犯カメラシステムを接続するための仕組み
クラウド録画 → 防犯カメラの録画データをインターネット経由でクラウド上へ保存する仕組み
です。
例えば、
録画は店舗内のNVR・HDDへ保存 + P2P方式でスマートフォンから遠隔監視
という構成も可能です。
「スマホで見られる=クラウド録画」とは限りません。
P2P方式でも録画映像を検索できる?
対応するレコーダーやアプリであれば、外出先から、
-
ライブ映像を見る
-
過去の録画映像を検索する
-
日時を指定して再生する
-
AI検知映像を確認する
といった操作が可能な場合があります。
ただし、録画映像を遠隔再生する場合もインターネットを経由するため、通信速度が影響します。
高解像度映像を早送りしたり、複数台を同時再生したりすると、ライブ映像以上に操作性へ影響が出る場合があります。
P2P方式を利用するときの確認ポイント
導入前には、次の点を確認するとよいでしょう。
-
P2P遠隔監視に対応しているか
-
スマートフォン・PCの対応状況
-
設置場所のインターネット環境
-
上り通信速度
-
サブストリーム設定
-
通信の暗号化や認証方法
-
メーカーのアップデート体制
-
複数人・複数拠点での利用方法
-
インターネット障害時にも現地録画を継続できるか
単に「スマートフォン対応」と書かれているだけで判断せず、どのような仕組みで遠隔監視するのかまで確認することが大切です。
よくある質問
P2Pなら固定IPアドレスは必要ありませんか?
一般的なP2P遠隔監視では、利用者側で固定グローバルIPアドレスを用意する必要がない製品が多くなっています。
ポート開放は必要ですか?
P2P方式では、通常は利用者が個別にポート開放を行わなくても遠隔監視できるよう設計されています。
P2Pなら映像は必ずスマホとレコーダーの直接通信ですか?
必ずしもそうではありません。接続の確立にメーカー等のサービスを利用し、ネットワーク環境によっては映像通信が中継サーバーを経由する場合もあります。
インターネットが切れると録画も止まりますか?
現地のNVR・DVRへ録画する構成なら、インターネット障害中も現地録画を継続できる場合があります。ただし遠隔監視はできなくなります。
スマートフォンで見ると通信量はかかりますか?
はい。モバイル通信で映像を見る場合はデータ通信量を消費します。長時間監視する場合は注意が必要です。
まとめ
P2P方式は、防犯カメラの遠隔監視を簡単にする仕組みとして広く利用されています。
従来のように、
固定IPアドレス + DDNS + ポート開放
などを利用者が細かく設定しなくても、QRコードや機器IDを登録することで遠隔監視できる製品が増えています。
ただし、
P2Pだから必ず直接通信する
P2Pだから通信速度は関係ない
P2Pだからどんなインターネット回線でも使える
というわけではありません。
特に重要なのは、設置場所側の上り通信速度です。
また、防犯映像という重要な情報をインターネット経由で扱う以上、メーカーの信頼性、認証、暗号化、ファームウェア更新なども含めて製品を選ぶことが大切です。
防犯設備士からのワンポイントアドバイス
P2P方式の最大のメリットは、遠隔監視の設定を大幅に簡単にできることです。
一方、実際の施工現場では、
「アプリへの登録はできたのに、映像が遅い・途切れる」
ということがあります。
この場合、P2Pの設定だけを見るのではなく、
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現地の上り回線速度
-
サブストリームのビットレート
-
同時表示するカメラ台数
-
ルーターや通信環境
まで確認する必要があります。
また、現地録画と遠隔監視を分けて考えることも重要です。
高画質映像は現地のNVRへ録画し、遠隔監視には通信量の少ないサブストリームを利用する。
このように役割を分けることで、高画質録画を維持しながら快適な遠隔監視を実現しやすくなります。