PoE給電とACアダプター給電の違い
防犯カメラの電源はどう取る?仕組み・メリット・選び方を解説
防犯カメラを設置するには、映像を送るための配線だけでなく、カメラを動かすための電源が必要です。
IPカメラでよく使われるのが、PoE給電です。
LANケーブル1本で、
映像などのデータ通信 + 電源供給
を同時に行えるため、防犯カメラの配線をシンプルにできます。
一方、ACアダプターを使用して、カメラの近くから個別に電源を取る方法もあります。
「LANケーブルがあるならPoEの方がいいのでは?」
と思われるかもしれませんが、設置場所やシステム構成によって適した方法は異なります。
この記事では、防犯カメラのPoE給電とACアダプター給電の違いを、施工面も含めて分かりやすく解説します。
PoE給電とは?
PoEとは、
Power over Ethernet
の略です。
LANケーブルを使って、データ通信と電力供給を同時に行う技術です。
通常のネットワーク機器では、
LANケーブル → 通信
電源ケーブル → 電源
と、それぞれ配線する必要があります。
PoE対応のIPカメラなら、
PoE対応NVR・PoEスイッチ
↓
LANケーブル1本
↓
IPカメラ
という構成にできます。
カメラまでLANケーブルを1本配線すれば、映像通信と電源供給の両方を行えるのが大きな特徴です。
ACアダプター給電とは?
ACアダプター給電は、コンセントのAC100Vからカメラに必要な電圧へ変換して電源を供給する方法です。
例えば、
AC100Vコンセント
↓
ACアダプター
↓
DC12V
↓
防犯カメラ
という構成です。
カメラによって使用する電圧・電流は異なります。
そのため、ACアダプターを交換する場合には、
-
出力電圧
-
必要電流
-
コネクタ形状
-
極性
などを確認する必要があります。
PoE給電とACアダプター給電の違い

PoEならLANケーブル1本で済む
PoEの最大のメリットは、カメラまでの配線をシンプルにできることです。
通常なら、
LANケーブル
+
電源ケーブル
が必要なところを、
LANケーブル1本
にできます。
例えば建物の外壁へIPカメラを設置する場合、カメラの近くにAC100Vコンセントを新設しなくても、PoE機器側から電源を供給できます。
これは防犯カメラ工事では非常に大きなメリットです。
PoE対応NVRから直接給電する方法
防犯カメラ用NVRには、背面にPoE対応LANポートを搭載した製品があります。
例えば8チャンネルのPoE対応NVRなら、
カメラ1 → NVRのPoEポート1
カメラ2 → NVRのPoEポート2
カメラ3 → NVRのPoEポート3
というように接続できます。
構成が分かりやすく、小規模な店舗・事務所・住宅などでは使いやすい方法です。
ただし、PoEポート数やNVR全体の給電可能電力を確認する必要があります。
PoEスイッチから給電する方法
NVRから直接配線するのではなく、PoE対応スイッチングHUBを使用する方法もあります。
例えば3階建ての建物で、
1階:NVR
2階:PoEスイッチ
3階:PoEスイッチ
のように配置し、それぞれのPoEスイッチから近くのカメラへLANケーブルを配線できます。
この方法は、
-
ビル
-
工場
-
倉庫
-
大型店舗
-
カメラ台数が多い施設
などで有効です。
すべてのLANケーブルをレコーダーまで直接引き戻す必要がなく、ネットワーク構成を考えながら配線できます。
PoEインジェクターを使う方法もある
PoEに対応していないネットワーク機器から、PoEカメラ1台だけへ給電したい場合などには、PoEインジェクターを使用する方法があります。
概念的には、
ネットワーク
↓
PoEインジェクター
↓
LAN通信に電源を重畳
PoEカメラ
となります。
少数のPoE機器を追加する場合などに利用されます。
PoEなら何でも接続できるわけではない
PoE対応と書かれていても、すべて同じではありません。
代表的な規格として、
IEEE 802.3af(PoE)
IEEE 802.3at(PoE+)
IEEE 802.3bt(PoE++)
などがあります。
供給できる電力が異なるため、カメラ側が必要とする電力をPoE機器側が供給できる必要があります。
一般的な固定カメラなら消費電力は比較的小さいことが多いですが、
-
PTZカメラ
-
強力な赤外線LED
-
白色ライト
-
ヒーター
-
ワイパー
などを搭載した機器では、より大きな電力が必要になることがあります。
PoEの「電力容量」に注意
例えばPoEスイッチが8ポートあるからといって、必ず8台のカメラへ最大電力を同時供給できるとは限りません。
PoE機器には、全ポート合計で供給できるPoE電力予算(PoE Budget)があります。
例えば、
カメラ1台:10W
で、
8台設置
するなら、
単純計算で
10W × 8台=80W
が必要です。
PoEスイッチ全体の給電能力が60Wしかなければ、電力が不足する可能性があります。
したがって、
ポート数だけでなく、合計給電容量を確認することが重要です。
LANケーブルの距離にも注意
一般的なEthernetでは、LAN配線の標準的な最大チャネル長は100mです。
PoEもLANケーブルを利用するため、距離を無制限に延ばせるわけではありません。
また、ケーブルが長くなると電圧降下や損失も考慮する必要があります。
長距離の場合は、
-
中継機器
-
光ファイバー
-
適切なPoE延長機器
-
配線構成の変更
などを検討します。
「PoEだからどこまでもLANケーブル1本で送れる」わけではありません。
LANケーブルの品質も重要
PoEではLANケーブルが、
通信線
であると同時に、
電源線
にもなります。
そのためケーブル品質は重要です。
特に屋外や長距離配線では、
-
Cat規格
-
導体材質
-
ケーブル長
-
屋外対応
-
配線環境
などを確認します。
安価なケーブルの中には、導体に純銅ではなくCCA(銅被覆アルミ)を使用したものもあります。
PoEでは電力も流すため、適切な規格・品質のLANケーブルを選ぶことが重要です。
ACアダプター給電のメリット
PoEが便利だからといって、ACアダプター給電にメリットがないわけではありません。
例えば、カメラのすぐ近くにコンセントがある場合は、ACアダプターで簡単に電源を確保できることがあります。
また、既設ネットワーク機器がPoE非対応の場合でも、カメラへ別途電源を供給すれば使用できる構成があります。
既設設備を利用するときには、ACアダプター給電が合理的な場合もあります。
ACアダプターは電圧を間違えない
ACアダプターを交換するときに最も注意したいのが電圧です。
例えばDC12V仕様のカメラへ、仕様と異なる電圧を加えると故障する可能性があります。
また、12Vなら何でもいいわけではありません。
確認するのは、
-
電圧(V)
-
必要電流(A)
-
極性
-
プラグサイズ
です。
純正品またはメーカーが指定する仕様の電源を使用するのが基本です。
ACアダプターの電流値はどう考える?
例えばカメラの仕様が、DC12V・最大1Aだったとします。
この場合、電源側にはカメラが必要とする電流を供給できる能力が必要です。
電流容量が不足すると、
-
起動しない
-
再起動する
-
夜間だけ不安定になる
-
赤外線LED点灯時に電源が落ちる
などの症状が出る場合があります。
特に夜間、赤外線LEDが点灯すると消費電力が増えるカメラがあります。
昼間は正常なのに夜になるとカメラが落ちる
場合は、電源容量も確認項目の一つです。
PoEでも夜間だけ不安定になることがある
これはPoEでも同様です。
昼間は正常に動作していても、夜間に赤外線LEDや白色LEDが点灯するとカメラの消費電力が増えることがあります。
PoEスイッチの給電容量に余裕がない場合、
夜になる
↓
複数カメラの赤外線LEDが一斉に点灯
↓
消費電力が増える
↓
PoE給電容量が不足
↓
カメラが不安定になる
ということも考えられます。
PoEシステムは、最大消費電力を基準に設計することが重要です。
PoEはUPSとの相性がよい
防犯カメラでは停電対策も重要です。
PoEのメリットの一つが、電源を集中管理しやすいことです。
例えば、
-
NVR
-
PoEスイッチ
-
ルーター
を同じ場所に設置し、UPS(無停電電源装置)へ接続します。
すると停電時でも、UPSの容量内で、
レコーダー
+
ネットワーク
+
PoEカメラ
をまとめて動かせる構成を作りやすくなります。
ACアダプター給電では停電対策が複雑になることも
カメラごとに離れた場所のAC100Vコンセントから電源を取っている場合、それぞれの電源をバックアップする必要があります。
例えば、NVRだけUPSへ接続していても、カメラ側のAC100Vが停電すれば、カメラ映像は録画できません。
そのため、停電時にも監視を継続したい場合は、システム全体の電源経路を考える必要があります。
PoEなら遠隔で再起動できる場合もある
PoEスイッチやNVRによっては、特定のPoEポートへの給電をOFF/ONできる製品があります。
その場合、
カメラが不安定
↓
PoE給電OFF
↓
PoE給電ON
↓
カメラ再起動
という操作ができます。
高所や遠い場所に設置したカメラまで行ってACアダプターを抜き差ししなくても、管理画面から電源を再投入できる場合があります。
保守面では大きなメリットです。
PoEスイッチが故障すると複数台停止する可能性もある
PoEによる集中給電にはデメリットもあります。
例えば8台のカメラを1台のPoEスイッチから給電している場合、そのPoEスイッチが故障すると、複数台のカメラが同時に停止する可能性があります。
一方、ACアダプターで個別給電していれば、1台のACアダプター故障で影響するのは基本的にその系統だけです。
つまり、
集中管理しやすいこと
と
集中部分の故障影響が大きくなること
は表裏一体です。
重要施設では、ネットワークや電源の冗長化も検討します。
屋外ではACアダプターの設置場所に注意
ACアダプターは、製品によっては屋内使用を前提としています。
屋外防犯カメラがIP66・IP67でも、ACアダプターまで防水とは限りません。
屋外でAC電源を使用する場合は、
-
防水BOX
-
コンセント
-
配線
-
コネクタ
-
漏電対策
などを適切に設計する必要があります。
カメラ本体の防水性能だけで判断しないことが重要です。
PoEでも屋外コネクタの防水は必要
PoEなら電源配線が減りますが、防水対策が不要になるわけではありません。
屋外IPカメラでは、LANケーブルのRJ45接続部分へ雨水が入ると、
-
コネクタ腐食
-
通信不良
-
PoE給電不良
などの原因になります。
そのため、
-
防水コネクタ
-
ジャンクションボックス
-
適切な防水処理
などを使用します。
PoEは便利ですが、屋外施工ではLAN接続部の防水処理が非常に重要です。
AHDカメラではPoEを使う?
一般的なAHDカメラでは、IPカメラで使われる標準的なPoE給電は基本的に使用しません。
AHDでは、
同軸ケーブル → 映像
電源線 → 電源
という構成が一般的です。
例えばカメラ側へDC12Vを供給します。
したがって、
IPカメラ → PoEを利用できる
AHDカメラ → 映像と電源を別系統で考えることが多い
という違いがあります。
防犯カメラの電源方式を理解すると、IPとAHDの配線方式の違いも分かりやすくなります。
PoE給電とACアダプター給電、どちらがおすすめ?
新しくIPカメラシステムを構築するなら、PoEは非常に使いやすい方法です。
特に、
-
複数台のIPカメラを設置する
-
カメラ付近にコンセントを設けたくない
-
配線をシンプルにしたい
-
UPSで一括して停電対策したい
場合にはPoEが適しています。
一方、
-
カメラの近くに既設コンセントがある
-
既設ネットワーク機器がPoE非対応
-
1台だけ追加したい
などでは、ACアダプター給電が合理的なこともあります。
設置環境別の考え方
一戸建て
新規でIPカメラを設置するなら、屋内のNVRやPoEスイッチからLANケーブルを配線するPoE方式が使いやすいでしょう。
店舗・コンビニ
カメラ台数が多くなるため、PoEスイッチやPoE NVRのポート数と総給電容量を確認することが重要です。
工場・倉庫
建物が広い場合、PoEスイッチを適切な位置へ分散配置することで配線を合理化できます。100mを超える長距離では別の伝送方法も検討します。
マンション・アパート
共用部のカメラでは、カメラ付近へACコンセントを設けず、管理側からPoE給電できる構成が管理しやすい場合があります。
よくある質問
PoEなら電源ケーブルは本当に不要ですか?
PoE対応カメラなら、カメラまで別の電源線を配線せず、LANケーブルから電力を供給できます。ただしPoEスイッチやNVR側には当然AC電源が必要です。
普通のLANケーブルでPoE給電できますか?
規格に適合したLANケーブルを使用します。特に長距離・高出力PoE・屋外施工では、ケーブルのカテゴリだけでなく導体材質や施工環境も重要です。
PoE対応カメラを普通のHUBにつないでも動きますか?
カメラへ別途電源を供給できる機種なら通信できる場合がありますが、通常の非PoE HUBからPoE電源は供給されません。
PoEスイッチはポート数だけ見ればいいですか?
いいえ。総給電容量(PoE Budget)も重要です。カメラ全台の最大消費電力を考慮します。
PoEとACアダプターを同時につないでもいいですか?
製品によって仕様が異なります。自己判断で両方を接続せず、メーカーの取扱説明書や仕様を確認してください。
PoEなら100m以上でも使えますか?
標準Ethernetでは100mが基本的な目安です。それを超える場合はPoEエクステンダー、スイッチ、光ファイバーなど別の方法を検討します。
まとめ
PoE給電とACアダプター給電の最大の違いは、カメラまで電源をどのように届けるかです。
PoE給電
PoE NVR・PoEスイッチ
↓
LANケーブル1本
↓
IPカメラ
LANケーブルで通信と電源をまとめて送れるため、配線をシンプルにできます。
ACアダプター給電
AC100V
↓
ACアダプター
↓
防犯カメラ
カメラの近くなどで個別に電源を確保します。
新規のIPカメラシステムではPoEが便利ですが、
-
PoE規格
-
カメラの最大消費電力
-
PoEスイッチの総給電容量
-
LANケーブルの距離・品質
まで確認する必要があります。
「LANケーブル1本だから簡単」というだけでなく、システム全体の電源設計として考えることが重要です。
防犯設備士からのワンポイントアドバイス
PoEカメラで意外に見落としやすいのが、昼間は正常なのに夜になると不安定になるケースです。
夜間になると赤外線LEDや白色LEDが点灯し、昼間よりカメラの消費電力が増える機種があります。
複数台のカメラが一斉に夜間モードへ切り替わると、PoEスイッチ全体の消費電力も増えます。
そのためPoEスイッチを選ぶときは、
「8ポートあるから8台つながる」
だけで判断せず、
各カメラの最大消費電力 × 台数
と
PoEスイッチの総給電容量
を確認することが大切です。
また、PoEは電源を集中させられるため、UPSと組み合わせやすいのも防犯設備として大きなメリットです。
停電時にも録画を続けたいのであれば、カメラだけではなく、
カメラ → PoEスイッチ → NVR → ルーター
まで、どこに電源が必要なのかを一つのシステムとして考えることをおすすめします。